騎手のエージェント制度その2

このエージェントのおっちゃんは、よく朝のサンタアニタ競馬場で見かけます

その1はこちら

エ「調教師たちは、出走する馬の情報を他人に知られたくないんだ。だからエージェントの僕らにも、馬の名前を言わない。よっぽど信用されていれば別だけど」

僕「おいおい、じゃあどうやって勝てる馬を確保すんのよ?もはやカンの世界じゃん」

そこで見せてくれたのは、彼がいつも持っている大きなシステム手帳。

エ「そう。だから調教師たちが、"この日のこのレースに登録するから空けておいてくれ"と言ってきた時にすぐ検討して回答できるように、過去1ヶ月間くらいの馬の情報を記録し続けているんだ」

彼のシステム手帳には、過去のレース結果のサマリーが印刷された紙と、それぞれの日付に想定できる馬の名前がびっしり書き込んでありました。

コンディションブック。出走条件が細かく設定されているのは、出走頭数を確保するために、各競馬場にいる馬のステータスにマッチしたレースを開催しなければならないからです。

エ「人によってやり方は違う。僕は書いた方が記憶に残るから書いているけど、人によってはコンディションブック(各開催におけるレース開催予定表。条件等も細かく書き込まれていてハンディ)と過去の結果だけを持ち歩いている人もいるし。でも、よっぽどの馬のことじゃない限り、だいたいどこのエージェントも調教師から言われる内容は同じだよ」

僕「で、いつ乗る馬確定するの(わかるの)?」

エ「調教師が出走登録したらわかる」

僕「それじゃ、完全に運次第じゃん!」

エ「でもいい馬に乗る確率を少しでも上げるために、“この人からこのレースの依頼が来たらこの馬だろうから、引き受けよう・断ろう”という判断基準のために、毎回コツコツやらなきゃいけないんだよ」

この人たちの仕事は、単なる騎乗依頼仲介ではありません。本当に、彼らの力量如何によって大きく騎手の成績は変わるのです。だから、騎手は実力のあるエージェントと仕事をしたがるし、エージェントはいい騎手と契約できることを願っているんです。
だからこそ、そのリスクに見合った報酬を騎手から受け取るのだと思います(それに、この作業ロードでは、自然と管理できる騎手の数にも制限が出てくるので、日本のような状況には陥りづらい)

日本のエージェント制度がどのようなものか、詳細までは存じませんが、馬名を知らされずに騎乗枠だけを確保されるような制度ではないだろうと思います。おそらくそこまでやってしまうと、エージェント希望者がいなくなるでしょうし。

騎手はムチ一本、それと一蓮托生のエージェントはペン一本といったところでしょうか。
リスクは騎手任せ、エージェントはローリスクでという形では、本当の信頼関係が形成されるとも思えません。

世界各国のやり方があるので全てを否定しません。が、担当騎手と心中するくらいの覚悟があってこそ、エージェントのエージェントたる意味合いが出てくるのではないかと思います。

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